2002.11.15

 ADSL

 ZDNetで、ソフトバンクの孫氏の話があった。
 ADSLは FTTHまでのつなぎの技術じゃないと言っていた。
 孫氏曰く、「BBケーブルTV」を見てくれ、ADSLでハイビジョン並みの動画配信は可能だ、現時点でハイビジョン以上のコンテンツはない、それ以上何を欲しいのか?と。
 いえいえ、皆さんそんな事を言ってるんじゃない。それは現時点での話でしょ?とてもじゃないけど、これからの未来を見た話じゃないんじゃないの?それで YahooBBは育ち盛りというの?
 はっきり言えば、現状の ADSLに未来はないと思う。速度も頭打ちになるし、距離も伸びる事はない。もちろん、現在の品質が上がる事もない。品質を落とさずに速度も上がって距離も伸びる、という事は無理だ。FTTHに比べて回線品質も劣る。
 確かに、現在プラスマイナス数年の間は孫氏の言う事もわからないでもない。が、10年後20年後の話を考えてみると、現在の ADSLではだめな事は想像出来る。コンテンツにしても、速くて安定した回線が確保出来れば、それなりにそれに合わせたコンテンツが出来るだろう。現在のコンテンツが ADSLで十分な理由は、ADSLが一番流行っているからである。FTTHになって、ハイビジョン以上のコンテンツが利用出来るようになれば、ハイビジョン以上のコンテンツを作るところも出てくる。それに、インターネットのコンテンツは動画映像だけではない。アプリケーションやデータベースデータなど、その他のコンテンツも多数に存在するしこれからも増えるだろう。
 そういう将来的な(一部現在でも)、市場を考えてみても、高速で安定した回線というのは必要だ。
 残念な事に、孫氏の話は、目先の利益だけ、自社の利益だけを考えた発言だとしか思えない。
 ソフトバンク自体はソフトウェアの流通を牛耳っていたのだから、インターネットでのアプリケーション配信などが本格的になるとかなりの打撃になるだろう。すでにソフトウェアのオンライン配信は始まっている。
 また、BBPhoneは、一見 VoIP電話のようだが、簡単に言うとインターネット通話という別段目新しくもない技術を電話機という形にしただけの物である。既存のインターネットテレビ電話と変わりない。その特徴となっている物にアナログ回線通話+インターネット通話には長所も短所もある。長所としては、インターネット通話が出来ない場合に自動的にアナログ回線に切り替わって電話出来るという点だろう。現在のところ通常の NTT回線が一番信頼出来るから、他の VoIPの様にインターネット回線だけを使う電話よりも信頼性はある。だが、ADSLにしたのに、回線速度がISDNよりちょっと速いぐらいしか出ないとか、リンクがすぐに切れるとか、そういう通信環境にある人は、最悪アナログ回線ばかりを使っていて、電話代は全く安くなっていない、ということも起こりえる。ADSLという不安定な通信回線を使っているので仕方がない事なのだ。もちろん、逆に恩恵を受ける事が出来る人も多い。回線品質が安定していれば YahooBB回線が使えるからだ。結局は IP電話という物は、どうやっても緊急時通話に向いていないので、FTTHを入れていても NTT電話回線は必須になる。それなら ADSLでも良いじゃないの?と言わせたいのかもしれない。FTTHは ISDNと同じで電源供給されないので停電時には使えない。ADSL自体がどうなのかは知らないが、BBPhoneの端末も停電時用の電池を入れるところが無さそうなので、結局は同じ事なのだが。そのうち FTTHの端末にも停電時用の電池を入れるところが付くだろう。
 結局は孫氏はソフトバンクという会社の社長であり、そもそも技術の発展に貢献したいわけではなく、利益を追求する企業の代表であるという事である。まあ、他の人の意見も似たようなものは多いが、営利目的の企業の人間の言う事を、もっともらしく、世の中に貢献しているように報道するのは止めて欲しい。営利目的の企業の人間が、自社利益のためにこういう事をしているというだけでいいでしょう?

 結局、すべての人に同じぐらいの利益をもたらすためには、FTTHという回線は必須であると思う。距離は関係がないし、回線品質もユーザーみんなほぼ同じ。ADSLの様に NTT局からの距離で格差が出てしまうという事もない。個人それぞれの利益として考えると、FTTHへシフトしていって FTTHの料金が安くなってくれる方がうれしい。
 以前 BIGLOBE等もやっていて、YahooBBも現在やっている、経路途中のファイバー回線をメタル回線へ変更する工事などは、FTTHへの移行を完全に阻害する事になる。こんな料金負担キャンペーンは、まさに将来を見据えていない目先の利益のためだけのキャンペーンだ。

 他の選択肢として、VDSLという事も考えられるが、これは伝送距離が短いので、基地局までは光ファイバ、基地局から家庭までのいわゆるラストワンマイルを VDSLで接続、ということであり、やはり高速な回線の場合の主要部分は光ファイバーである。

 ADSLのもっとも重要な制限として、NTT局から家庭まではすべてメタル回線でなければいけない、というのがある。
 これがメタル回線から光ファイバーへの移行を妨げている、一番大きい理由である。
 こういう事があるにもかかわらず、「ADSLで十分だ」等と言っている孫氏は、自社(自分)の利益しか考えていないのだから、同調する人が出てこないように祈るばかりである。
 でも、ISPからの部分は光ファイバー網だろうから、こっそりと全面光ファイバーへの移行を考えているに違いないとは思うのだが。たぶんBフレッツや他の光ファイバー対応 ISPが増えてきて価格も下がってきたら、YahooBBも光対応とかなんとか言い出すに違いないのだが。